人の角煮の受難

Ordeals Of Hito No Kakuni

存在への恐怖、そこから生じた疑念

初めて発狂したのは5歳のときだった。お風呂から上がり、ソファに座って、濡れた髪をタオルで絞りながらなんとなく足元を見ていた。お風呂場から聞こえてくる母親と幼い妹の声がだんだんぼんやりしてくる。視線は右足の親指に集中し視界はビネットがかかったように外側からどんどん薄暗くなっていく。突然意識が親指に吸い込まれる感覚がして反射的に絶叫した。自分の声で我に返る。心臓はバクバクと脈打ち、背中はじっとり汗ばんでいる。いまだかつて体験したことのない本能的な恐怖に怯え、身体が震えた。叫び声を聞いて駆けつけた母親の姿を見るなり堰を切ったように泣きじゃくった。心配する母親に縋りながらわたくしは言った。「死ぬのが怖い!」

 

 

 

ごきげんよう、人の角煮です。冬ですね(挨拶が下手)

かっこいい書き出しを目指してみましたがどうですか?しゃらくせ〜と思っている方もいるでしょう。わたくしもそう思います。今日はわたくしが幼い頃から現在まで抱えている、そして死ぬまで抱え続けるであろう"存在への恐怖"について書き記したいなと思っています。ツイッターに敢えて書いていないこともこの機会に吐き出してしまう予定です。反応が怖いですが、いざ、書かん!

 

 

 

咄嗟にでた「死ぬのが怖い」というわたくしの言葉に、母親は「そんなのまだまだ先でしょ」と言って、まともに取り合ってくれなかった。その日からわたくしは度々発狂するようになった。何度も何度も叫び、泣き喚いた。両親は次第にわたくしを心配しなくなり、うるさいと怒鳴ったり、放置するようになった。独りぼっちで得体の知れない恐怖と戦うのはあまりに辛い。しかし発狂を繰り返すうちに、恐怖の輪郭が薄ぼんやりと見えてきた。これは、死への恐怖ではない!

 

 

 

読書が好きだったわたくしは、幼稚園の本棚に並べてあったヘレン・ケラーの自伝を手に取った。目も耳も不自由な身体での生活。想像するだけで恐ろしい。ではなぜわたくしは目が見えて、耳が聞こえているのだろう。ふとそんな疑問が浮かんだ。なぜ味がわかって、においがわかって、感触がわかるのだろう。なぜ考えることができるのだろう。なぜ生きているのだろう。なぜ存在しているのだろう。溢れ出す疑問が、恐怖の姿を確かなものに変えた。これは、存在することへの恐怖だ。

 

 

 

恐怖の根源を確信すると同時に、新たな疑念が芽生えた。存在することはこんなにも不可解で恐ろしいのに、なぜ周りの人間は恐怖を抱いていないのだろう。そしてこの疑念は、歪な形に変化した。恐怖を抱いていないということは、存在していないのではないか、と。その考えは驚くほどすんなりと心に馴染んだ。産まれ持った心に、ぴったりと嵌る感覚がした。しかし、それを信じたくないという気持ちもあった。なんとか間違いを証明できはしないかと、いろんな行動をした。小学校時代、妹やクラスメイトに物の見え方や音の聞こえ方の実験をした。どちらも成功したが結局他者の存在に対する不信感は拭えなかった。中学校時代、存在するということについて紙にまとめた。

 

 

(いにしえのスマホから2枚だけ発掘されました。何もインプットせず考えたことをただ羅列しているのでしっちゃかめっちゃかで論理が穴ぼこだらけですがご容赦ください。)

この紙を見せればわかってくれるかも、と期待しながら数人の先生に話をするも撃沈。変な顔をされたり的はずれな話をされたり散々だった。もう誰にもわかってもらえないんだ。そう思って高校時代は誰にも言わずに過ごした。哲学に出会い、ここに答えがあるかもしれないとたくさん本を読んだ。哲学をきっかけに片割れと出会い、一縷の望みをかけて存在への恐怖について話した。片割れは理解してくれた。共感はしてくれなかったけれど、本当に驚いた。そんな人今までいなかったから。ほんの少しだけ他者の存在を感じられるようになった。

 

 

 

今でも発狂は起こすし、周りの人間が生きていることをふとした瞬間に疑ってしまう。この恐怖は論理的に説明されても消えることはないだろう。産まれ持ったものなのだから。でもきっと生きているんだよね?だから信じてこの文章を公開します。たくさんの人が生きていてわたくしもその中の1人なのに「自分が世界を映している、ゆえに自分が世界だ」とか本気で言っちゃってるヤバいやつだってバカにしてください。それか治し方教えて。お願いします。

 

 

 

長々とお付き合いいただきありがとうございます。皆様のことNPCだと思っちゃうときもあるけど、関わることは大好きです。意味わかんねーよって言われても仕方ないですが怒らないで〜!炎上させないで〜!ということで、それではごきげんよう、人の角煮でした〜。

 

 

 

サークルクラッシュ同好会様のアドベントカレンダー12月15日担当

 

 

 

追記:これを書いている途中に新しい発見があったので次は「恐怖」に焦点を当てた文章を書こうと思っています。よかったら読んでね。